絶倫ファクトリー

生産性が高い

バイオ燃料は環境に悪い?

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クーリエ・ジャポンという雑誌がある。

僕が大学入ってすぐの頃に創刊した雑誌で、隔週発行の講談社の雑誌だ。
コンセプトとしては、世界のメディア(主に紙媒体)を翻訳し、いろんな視点からトピックを集めていく、というものだ。
創刊〜5号くらいまでは買っていたのだが、幅広いトピックを扱っている代わりに一つのトピックに対する掘り下げが浅すぎて、ストレスの溜まるものになっていた。ので買うのをやめてしまった。
それがどうやら5月から月刊化して、中身も若干厚くなって帰ってきたらしい。デザインも良かったので試しに買ってみたのだが、その中に個人的には衝撃的な事実だった特集があったので書きたい。バイオ燃料としてもてはやされているエタノールが、実は環境に全然良くないんじゃないか、という話である。

クーリエ・ジャポンより―エタノールを作るために環境破壊

エタノールに代表される、いわゆるバイオ燃料と呼ばれる穀物由来の燃料が今猛烈に広まっている。アメリカ大陸を中心に、とうもろこし、サトウキビを原料にしたエタノール燃料が精製されている。石油燃料に代わる次世代のエネルギーとして注目されており、急速に規模を拡大している。
エタノールの売り文句は、とにかく「環境に優しい」に尽きる。有限な石油燃料を、汚い排ガスを出しながら貪り食うよりは、再生可能な穀物でキレイな排ガスを出す燃料を使ったほうがいいのは明白だ。しかし、どうもこのエタノール、少なくとも現状においてはもろ手を挙げて賞賛できる代物ではないらしい。


まずエタノールの原料の問題。サトウキビやとうもろこしは、それまで人間の食料用、家畜の飼料用として生産され、その需給のバランスが保たれてきた。ところがエタノールがバイオ燃料として脚光を浴びるやいなや、それら食料・飼料用として生産されてきた穀物がエタノール用に回され、需要と供給のバランスが崩れた。結果としてとうもろこし・サトウキビを原料として生産物の価格が上がる。日本でもマヨネーズの価格が先日上がったが、それはこのバイオ燃料普及の余波といわれている。さらにサトウキビ・とうもろこし以外の穀物が生産されなくなり、結果的に他の生産物も値段が上がる。
それだけではない。バイオ燃料先進国のブラジルでは、サトウキビを生産するために森林を焼き払い、余計に環境破壊が進むという、馬鹿みたいな転倒が起きている。

アメリカ国内では―自由の国の不自由

そしてアメリカに焦点を絞ってみると、事態はさらに複雑で最悪な方向に向かっている。アメリカの穀物業界を流通的にも政治的にも牛耳っているのが、ADMという商社だ。彼らはとうもろこしに関連して、バイオ燃料以前から、砂糖に関税をかけるよう政府に要求して自社のとうもろこし製甘味料のシェアを伸ばしたりとあくどいことをやっていた。そして彼らは現在、政府に働きかけて、ブラジルからバイオ燃料やその原料の輸入をストップさせ、自分の流通させているとうもろこしを使ってエタノールを作るよう仕向けているのだ。
一見すると、まぁ企業としてはあくどいかもしれないが、環境に最悪とは言えないように見える。だが実はとうもろこしはエタノールの原料としてはあまり優秀な方ではないらしい。とうもろこしは、それから作ったエタノールが燃焼時に生み出すエネルギーと同じくらいのエネルギーを、精製時に必要とするからだ。一方さとうきびは優秀で、精製時に要するエネルギーよりはるかに大きなエネルギーを生み出す。さらに将来的にはより効率の良いセルロースを原料にしたエタノールが普及すると言われている。
だがADMは主に政治献金を武器にアメリカ国内で勢力を保ち続け、エタノールの原料をとうもろこしにすることに固執している。このままでは、決して環境に優しいとは言い切れないとうもろこし産のエタノールが普及し続け、優秀なサトウキビ産のものが排除されることになる。これでは逆効果だ。さすが自由の国アメリカ。強者が利権を貪る自由はちゃんと保証されているらしい。


以上、クーリエ・ジャポン32号(p.p54-59)のまとめである。知ってる人にとっては何を今更、という話ではあろうが、バイオ燃料?まぁ環境に良いならいいんじゃね?とか考えていた僕にとってはびっくりの話だった。そういや去年科学社会学の集中で似たような話を聞いた気が…もっと先生に聞いておけばよかった。

ちなみに日本でバイオ燃料という言葉がまだ目新しい存在であることから分かるように、日本はこの分野で後進国である。そもそも普通の穀物自給率だって低いんだから、燃料に回す余裕なんざあるわけがない。そのため世界情勢によって大きく振り回されるのは、石油もバイオも変わらないようだ。
あと、大豆はバイオ燃料としてとうもろこしよりも効率が悪く、生産を減らされる傾向にあるらしい。将来、大豆の値段まで高騰したら、それこそ日本は終わってしまう。