読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

絶倫ファクトリー

生産性が高い

「新聞社―破綻したビジネスモデル」

デザインを変えました。文字が小さくなったが、長文を書きがちなこのブログにはあっている気がする。

さて、今日は某大手マスコミの説明会もどきに参加してきた。だからというわけではないけれど、ネットの隆盛で危機に瀕しているといわれている新聞社について、実際に現場にいた人間が書いた本を読んだ。

内容

この本の著者の河内氏は、元毎日新聞社取締役。ただし毎日新聞の話だけでなく、新聞業界全体の構造について書いている。朝日、読売、産経、毎日、日経の現状、各新聞の経営状況、テレビ・ラジオとの結びつきなど。
特に新聞社が、各販売店に対して注文以上の部数を押し付ける「押し紙」の問題は興味深い。部数獲得競争が激化する中で、とにかく部数を上げるため、「押し紙」をしてでもとにかく新規の顧客を開拓させた。これによって、新聞の公称の発行部数と実際の販売部数には開きが生じている。*1そして新聞社は正確な販売部数がバレるのを恐れている。実際の販売部数が公称より少ないと分かれば、当然広告主から文句を言われるからだ。


そして部数獲得競争のもうひとつの弊害が、本社が販売店に払う莫大な販売促進費という名目の補助金である。様々な名目で本社は販売店に補助金を出し、その補助金によって販売店はどうにかこうにか黒字を維持している状態らしい。
しかし、こうしたやり方は新規顧客がこれからも伸び続けるという前提に成り立っている。人口上昇が止まり、現象に向かう中、新規の顧客は限られている。押し紙をするのは良いが、それが売れない。それでも補助金は出す。結果、本社の金で自分のとこの新聞を買うという「たこが自分の足を食う」状態が発生していると言う。

新聞がいかに生き残るのか

書かれていることを鵜呑みにするならば、確かにもはや新聞社のビジネスモデルは破綻寸前である。企業からの広告費も買い叩かれている状況だという。
だが、そうした状況に対する解決策が本書の弱いところである。筆者が「新聞の復権」をどう行うかを説く部分で、こう書いている

新聞の機能とは何か、を突き詰めれば、プロの記者が記事を書き、対価を払ってそれを入手したいと思う読者がいるかどうかです。紙に印刷されているのか、ネットで見るのか、戸別配達されるのか、コンビニで買うのか、それらは二次的な問題に過ぎない。

確かに新聞のジャーナリズム的機能として考えれば、これは間違っていない。だが筆者が本書でそれまで指摘してきたのは、ジャーナリズムとしての機能の衰退ではなく、ビジネスモデルとしての新聞の危機である。新聞は「紙に印刷されている」という「二次的」な側面を全面に活かしたビジネスモデルであった。紙に印刷されているから、各家庭に配達できるし、またその需要が生まれる。紙に印刷されているから、広告が大きく載せられ、その受容が発生する。なのに、その要素を「二次的」とばっさり切り捨ててしまうのは、視点がずれている気がする。確かにジャーナリズムは紙だろうがネットだろうが電波だろうが変わらないだろう。だがそれを使ってどう金を稼ぐかというのは、そのメディアの形式的な部分によっているところが大きい。
そして新聞社が紙という媒体にこだわって商売を続けようとするならば、おそらく新聞の生き残る道はステータスシンボル化を伴う、顧客対象の絞込みになるのではないだろうか。「EPIC2014」という動画では、新聞は将来高級化し、一部のインテリ層を対象にひっそりと生き残るという未来図が描かれている。一方で、本書には以下のような記述もある。

いまや新聞の最大、最良のお客様は60歳以上の高齢者で、年金生活者の比率はうなぎのぼり。だとすれば、新規読者に三ヶ月無料サービスといった姑息な手ではなく、恒久的に高齢者を優遇する価格政策が必要になる。

ここでは高齢者を「年金生活者」という括りで見ている。おそらく著者が想定しているのは高級化ではなく低価格路線だろう。しかしそうなると最終的に安売り合戦で勝つのは体力の大きいところであり、朝日・読売・その他という三つの塊に落ち着くのだろう。
以前だったら、そうした結論に僕は首をひねっただろう。だが本書を読むと、「それも仕方ないか」と諦めたくなる気持ちになってくる。それほど現状の新聞社のビジネスモデルには絶望しか見えないのだ。

何故新聞を読まないか?

今の若い人は新聞を読まないという。それが真実だとするならば、それも仕方ないことだと思う。確かに新聞が好きな人は、「ネットやテレビにない面白さがある」という。文化面や書評、社説なんかは新聞にしかない面白さだろう。
だが、多くの人はそうした新聞の「ニュースソース」としての機能以外の部分を、上手く使いこなせていない。ほとんどの人が、日々のニュースのチェックにしか使っていないのではないか。そしてそうした用途ならば、インターネットのニュースサイトをRSSリーダに登録すれば事足りる。それだけでは深みが足りないというならば、知りたい分野について書いてあるブログを読むなり、新書をいくつか買うなりで満足してしまう。

高級化にしろ低価格路線にしろ、みんなと話題を共有するためのニュースチェックであれば、もはや新聞に頼る必要は無い。新聞が新聞足りえるには、新聞にしか出来ないことを探す必要がある。*2

*1:ただし新聞社は公にはそれを認めていない

*2:それがあるのかは疑問だが