2008年をまとめて振り返る ウェブサービス/本/エントリー
ここ最近、インプットもアウトプットもここに載せられない/載せないことにしている類のものが大半なので、エントリーがかけない。とはいえ、Chim↑Pomがブログのトップなまま年を越すのもアレといえばアレなので、せめてお茶濁しとして2008年を振り返る系エントリーでも書こうと思う。
どういうサマリーの方法にするか悩んだが、あれこれ立て並べるのもめんどくさいのでいくつかのカテゴリのトップ3を紹介するということにする。(と書いた後に一番めんどくさいのは紹介するブツを探す作業だということに気づき、トップ3にしようが10にしようが大して作業量は変わらないことに気づいた。)
このウェブサービス(ツール)がすごかった2008
今年は、というか今年も今まで以上にネットにどっぷりがっぷりな年となりました。毎日何かしらのウェブサービスが生まれ、その大半が半年後には人々の記憶からすら消えてる、そんな状況で、個人的にお世話になったオモチャトップ3です。
■tombloo
tumblrははてなで話題になってから一時使っていたものの、しばらく放置していました。理由はやはりブックマークレットからの作業だと、ブラウジングのリズムが狂ってしまうという点でした。RSSリーダから出した後いかに効率よくブックマークしたり読んだりするかが大事だったので、あのページ変遷の手間は、わずかなものであっても自分にとってはわずらわしいものでした。
RSSリーダをLDRに変えたこともあり、tomblooの登場はそうしたノイズを挟み込むことなくスクラップが可能になりました。LDRの画面を右クリックしたときに「Share...LDR」の文字を見たときは感動しました。これはすごい。この説明だけだと何がなんだか分からないでしょうが、ここに出てきた単語が大体分かる人でまだ未使用の方は、ぜひお使いになることをお勧めします。僕がfirefoxから離れられない大きな理由の一つです。
具体的な使い方などはこちらのエントリが参考になるかと。
Tomblooこそ自分をGoogle化する最強のツール - Future Insight
LDR+LDR Full Feed+tomblooは最強。
■ustream
以前から人のプログラムを見ていたりはしてたのですが、id:tsukubahihyouで「自己啓発トークラジオ SURViVE」を始めてからは見る側から出る側になりました。また6月に発生した秋葉原連続殺傷事件の現場の様子を中継したプログラムを、NHKがエコ番組を流す横で見ていた、というインパクトは決して忘れられないでしょう。
■twitter
使い始めたのは今年じゃないのでランクは下。でも今年になってかなり勢力的に使い始めた、時間を突っ込み始めました。ちなみにこれまで僕がtwitterに費やした時間は「3日3時間12分20秒」らしいです。
またクライアントアプリケーションではtweenを使うようになりました。これは一時期twitterのサーバがあまりに不安定で、発言抜けや遅延が頻発したため、それに耐えられるようなクライアントが欲しいと考えたためです。若干重いのが難点ですが、かなり使いやすい。
この本がすごかった2008
「社会学徒」などと偉そうにプロフィールに書いている割に、あるべき姿とはほど遠い大学時代でした。その中でも相対的に今年は読書した方(あくまで相対的)だった気がします。あくまで気がします。
ちなみに選んだ本は全て「今年出版された本」です。
■『「公共性」論』
- 作者: 稲葉振一郎
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2008/03
- メディア: 単行本
- 購入: 8人 クリック: 172回
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今年の3月に出た本。出た直後に筑波批評社で読書会をしたら、5月に出した『筑波批評』でみんなこれに影響されていた、という個人的に印象深い本。斎藤純一『公共性』と並んで、公共性とは何ぞやという話をする際には読んでおきたい本。しかし都市論がジェイコブスの呪縛から解放されるべきなように、公共性論もアーレントやハーバマスのパラダイムからいい加減逃れるべきではないのかなとも感じました。そういう意味で(今年出た本ではないですが)『CODE』は非常に示唆に富んだ本でした。
■『不可能性の時代』
- 作者: 大澤真幸
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/04/22
- メディア: 新書
- 購入: 14人 クリック: 179回
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元はいくつかの論考を集めた本ですが、それなりの構成になってるあたりがさすがです。いつもの大澤節といえばそうなのですが、せり出す<現実>へのまなざしだけでなく、そこから逃れる極端な<虚構>へのまなざしにもきちんと触れているあたり、外さないなという感じでした。
■『国力論』
- 作者: 中野剛志
- 出版社/メーカー: 以文社
- 発売日: 2008/05/20
- メディア: ハードカバー
- 購入: 4人 クリック: 63回
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現役経産省の官僚が書いた本。これだけでも地味にびっくりする本ですが、中身の重厚さにも驚きます。経済ネタはあまり拾っていない自分ですが、もう少し話題になってもいいなじゃないかなと思った本でした。特に今年後半の経済危機を踏まえた上では、重要な本だと思います。新刊の『経済はナショナリズムで動く』もお勧めです。
このエントリーがすごかった2008
そもそも日々無尽蔵に生み出されるブログのエントリーを三つ、選べというのが無理なのですが、「2008年ウェブで話題になったこと」について書いたエントリーに絞りながら紹介します。
■2008-06-09,13:05 written by complexequality
6月に発生した秋葉原連続殺傷事件の後、ブログ界隈はこの話題で持ちきりでした。僕のブログでもいくつかエントリを書きましたが、あの大量のエントリの中で群を抜いて秀逸だったのがこの井上明人氏によるものです。その読ませる力は長さを忘れます。
■ - 仮想算術の世界
今年ネットで話題になった本、というと、宇野常寛氏の『ゼロ年代の想像力』がその一つに挙げられます。良くも悪くも「ゼロ年代」を代表することになる一冊になるだろうと思うのですが、それはブログでの扱いの多さ、という形で記憶に残っていることも強く影響していると思います。中でも福嶋亮大氏によるこのエントリは、「ナルシシズム(ナルシズム)」を扱う人々の意識の変化を捉えているという点で、今後『ゼロ想』が言及される際には合わせて参照されるべきエントリーだと思われます。
■ネットで「小女子煮る」予告、都内大学生逮捕 : bogusnews
このエントリそのものは2006年に書かれており、ちょっとルール違反なのですが、しかしそうであるがゆえに驚くべきエントリーです。「小女子焼き殺す」とネットで書いた男が逮捕されたのは、秋葉事件以降の「犯行予告」と逮捕のいたちごっこの中でも象徴的事件でしたが、それをなんとあのジョークサイトのbogusnewsが二年も前にネタにしていて、それが現実のものになったというのはかなり衝撃的でした。来年はbogusのネタが一つも現実にならないことを祈ります。ジョークサイトのネタが現実になるというのは、最も野暮で笑えない出来事です。
(おまけ)■後藤和智『おまえが若者を語るな!』 - logical cypher scape
書評、ということで言えば、id:sakstyleの「これは、悪口が書いてある本である」というこの一文は今年見た書評の中で最も簡潔で最も優れている文。正直この本に関しては彼のこの一文以外、要らない。それで全てです。
最後にこのブログを振り返る。
今年は年初から2年も前に書いたエントリ(しかも授業で提出したペーパーの一部!)が突如300以上ブクマされて困惑したり、ポストモダンをゆるふわ化させたりと個人的に激動の1年でした。今年こそ真面目に社会学、と思っていたのですが、振り返れば成果はさっぱりなあたり、あれもやればよかったこれもやれば良かったと後悔の念だけが浮かんできます。これは上手く書けた、と納得できるエントリは、年に一つ程度でしょうか(今年は「承認」だけでは済まぬ問題たち―物語と承認の彼方に - No Hedge!一本くらい)。
週1〜2回程度更新されれば良い方の当ブログですが、今年はRSSリーダに登録してくれる方も増え、「しっかりしたもの書かなきゃなー」とそれなりに色々意識した年でもありました。来年度(四月)からは私的にも環境が激変する予定ではありますが、粛々と淡々とこれまでどおり続けていきたいと思います。
それでは良いお年を。来年もよろしくお願いいたします。