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生産性が高い

「Twitter有料化」に間する誤解と日本におけるTwitter事業について

Twitterが有料化するらしい→それは誤報らしい」という伝聞が駆け回っている。だがその内容は、発表されている事実とはずいぶん異なる形で伝わっているようだ。

事態の概要

話が広がった発端はITmedia プロフェッショナル モバイルによるこの記事。

 11月25日、mobidec2009で講演を行ったDGモバイル取締役COOの杉建一氏が、Twitterのビジネスモデルに言及。2010年1月にも、Twitter向けに課金プラットフォームを提供する予定であることを明らかにした。

 サービスとしては「有料つぶやきサービス」と「コンテンツ課金」を提供する予定。有料つぶやきサービスは、ユーザーが既存のアカウントを月額課金方式にできるようにするもので、課金方式は100円〜1000円の月額課金と100円〜1000円の個別課金から選べる。

 コンテンツ課金は、Twitterを通じて情報やコンテンツを販売するための仕組みを提供するもの。月額課金に対応し、手数料は30%を予定している。決済についてはキャリア課金やクレジット、コンビニ決済などを使えるようにする予定だ。

つぶやきを有料コンテンツに――Twitterに課金システム、来年1月から - ITmedia プロフェッショナル モバイル

TechCrunchおよびTecCrunch Japanでは、この記事を受けたエントリーがいくつか上がっている。

Twitter Japanが来年1月から有料アカウントを開始 〔アップデートあり〕

Twitter Japanの有料コンテンツ制が成功する(と思われる)6つの理由〔アップデートあり〕

これらの記事を受けて、「Twitterが有料化するらしい」という話がTwitterユーザーの間で広まった。しかしこれに対し、Twitter Japanはブログ上でこの有料化の話を否定した、ということになっている。

Twitterブログ: Twitter 関連サービスに関する一部報道について

しかしことの発端となったITmediaの記事は、mobidec 2009というイベントで、DGモバイルの杉健一取締役の発表したセッションそのままのベタ記事である。mobidecのWebサイトに掲載されたセッション紹介にはこう書かれている。

DGグループは世界で一番成長しているサービスである、「ミニブログ/Twitter」の日本での本格普及とマネタイズを実行していきます。当グループが提供しているTwitter関連のソリューション事例を交えながら、今後のモバイルプラットフォーム上での新規コンテンツ課金ビジネスの事業展開をご説明致します。
ページが見つかりません

なので、冒頭の記事に書かれたような内容が、DGモバイル社によって言及があったは、間違いなさそうだ。

「有料化」の内容

そもそも今回の件は、「有料化」という言葉が独り歩きし、その内容が吟味されぬまま「有料化→誤報」という情報だけが伝聞されているようにも見える。DGモバイルの杉氏によるセッションのプレゼン写真を見ると、有料購読となるのはTwitterのつぶやき自体ではなく、つぶやきの中にあるリンク先の文章であることが分かる。

f:id:klov:20091129094034j:image

この写真の中で、[Twitter課金 有料ページ 購入済み]とされているイメージは、明らかに現行のTwitterのインターフェースと異なる。Twitterの日本語版運営に携わるデジタルガレージ社(以下DG社)は、あくまで日本語版の事業化に関わっている立場であり、Twitterというサービスそのものの運営には関わっていない。なのでTwitterのインターフェースをいじることはできない。この話はTwitterの有料化というよりは、Twitterのインフラを使って有料購読のブログの記事を流す、といったほうが近い。

確かにTwitter本社でも有料アカウントサービスを準備しているという話題があった。

Twitter、有料アカウントの開始の準備が整う | ブログヘラルド

が、これは「高度な分析サービス、そして、アカウントおよび訪問者の情報提供が含まれる」らしいので、おそらく企業が運営しているアカウント向けにマーケティング用ツールを提供し、その企業から料金を徴収するモデルだろう。TLの購読者が料金を支払う(と思われる)今回の日本の話とは課金対象者・サービス内容が異なる。

Twitter日本語版」の運営者は誰か

mobidec 2009 で、DGモバイル社の社員による有料サービスへの何らかの言及があったことは間違いないだろう。ではなぜTwitter Japanはそれを否定するコメントを出したのか。

1つは、mobidec 2009におけるDGモバイルによるセッションの内容が、「Twitterの有料化」という伝聞されている内容とは程遠いからだろう。確かにきちんとセッションのプレゼン写真を見れば、上記のようにTwitterそのものが有料化するわけではないことが分かる。

そもそも、Twitter Japanによる有料化否定とされているブログの内容は、DG社の発表を引用するという形になっている。フォントがイタリックなのはそのためだ。そしてDG社による発表は、DG社のWebサイトトップにリンクされた以下のPDFに収められている。

PDFファイルを開くとわかるが、DG社の公式発表も、DG社の取締役の1人である伊藤穰一氏のブログのエントリを参照せよ、という内容になっている。
伊藤穰一氏による該当エントリには、冒頭に参照したTwitter Japanのブログエントリが引用した内容が書かれている(ちなみにこのエントリは、正確には伊藤穰一氏による英語エントリの和訳である。まどろっこしい!)。

Twitter Japan」が Twitter 上で有料アカウントサービスを始めるという一部報道がありますが、こうした事実はありません。日本において Twitter は無償のサービスであり、Twitter 社や株式会社デジタルガレージが、有料アカウントについて検討したり計画を立てたりしたことはありませ ん。また、Twitter 社と DG は事業パートナーシップを結んでいるものの、ジョイントベンチャーの 設立についての事実がないこともここに改めてご説明します。

本件に関する報道は、DG の子会社である株式会社 DG モバイルが、サードパーティとしての有料サービスの可能性について誤解を招きかねない説明を行ったことが発端になっています。 DG モバイルの説明は、Twitter 社とデジタルガレージのパートナーシップとは関係ない別個の ものです。

デジタルガレージ(私自身を含む)は、このような誤解を招いたことおよび、その修正についてのお知らせが遅れたことを深くお詫びします。この説明によって、Twitter 社に協力することを通じて Twitter を無償のサービスとして日本のユーザーに広めていくという弊社の方針を、多くのみなさまが理解してくださるこ とを望んでいます。

Twitter 関連サービスに関する一部報道について - Joi Ito's Web - JP

Wikipediaによる伊藤穰一氏の情報。

伊藤 穰一(いとう じょういち、1966年6月19日 - )は、日本のベンチャーキャピタリスト、事業者、活動家。クリエイティブ・コモンズ最高経営責任者。愛称はJoi。

DG社のWebサイトを見ると、彼らのビジネスの1つである「ベンチャー・インキュベーション」(投資事業)のタブに、「Joi Ito's Lab」の文字が見える。また、同じく投資事業を行う子会社のDGインキュベーション代表取締役社長 南一哉氏のブログには、2008年のエントリの中に以下のような記述がある。

Twitter プロジェクトは、DG の中では Joi が主催する Joi Ito's Lab. プロジェクトの一環と位置づけています。
TypePad Redirector

これらのことから、日本におけるTwitter事業は、DG社、特にその投資事業を行う関連会社によって強く進められてきたことが推測できる。

また今回の件とは直接関係ないが、上記の有料化に関するコメントを出した同じ日、DG社はTwitter事業に関する組織体制の変更を発表している。

当社は、全世界的に急速に拡大しているミニブログサービス「Twitter」を運営する米Twitter 社と、既に資本業務提携し、日本で同サービスを展開しておりますが、昨今、日本においても法人利用や著名人利用が加速しており、本格的な収益化に着手し始めております。
このような背景の中、Twitter 事業に関する責任体制を明確にし、更なる事業化を加速し、中核事業へと拡大させるため、現行の「イーコンテクストカンパニー」/「ディージー・アンド・アイベックスカンパニー」に加えて、新たに「Twitter カンパニー」を設置致します。

「Twinavi」など、Twitter日本語版のプロモーションは、CGMマーケティング(以下CGMM社)というDG社の子会社によって行われている。DG社はテクノラティジャパン、CGMマーケティング、DGモバイルを「メディア・インキュベーション」という形でくくっている。だが今回発表されたTwitterカンパニーという事業部は、その名称等からDG社直下の事業部のようだ。また上記の発表には今回の組織改編が「Twitter 事業に関する責任体制を明確」にするためとあり、Twitterに関する日本国内での事業はDG社が主導権を握る、ということなのだろう。

そしてこの人事異動に先に挙げた伊藤 穰一氏や南一哉氏は入っていない。彼らは投資が仕事なので、その先の収益化には関わらないのだろう。DG社の描くTwitter事業は、子会社を使った投資→プロモーションというフェーズを経て、確実に収益化のフェーズを狙っていると思われる。日本国内でのTwitter事業は、投資はDGインキュベーションおよび伊藤 穰一氏が、企業や著名人へのプロモーション活動はCGMM社が、携帯電話での展開はDGモバイル社が、という形で役割分担が図られてきた。その分業体制の中心にはDG社がいる、ということを今回の組織改編は示しているのだろう。だがその矢先でDGモバイル社によるフライング、そして投資筋である伊藤 穰一氏のブログエントリでの打ち消しというのは、少し体の悪い話でもある。有料サービスの有無を含め、今後の展開/対応が気になるところだ。