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「団地団V 〜だんちのよあけ」感想

都市論

「団地団 〜ベランダから見渡す映画論〜」の出版記念トークイベント「団地団V 〜だんちのよあけ」に行ってきた。『ぼくらのよあけ』作者の今井哲也氏を迎えて、3時間以上に渡って団地への愛にあふれるトークが繰り広げられた。

団地団 ?ベランダから見渡す映画論?

団地団 ?ベランダから見渡す映画論?


ぼくらのよあけ(1) (アフタヌーンKC)

ぼくらのよあけ(1) (アフタヌーンKC)


ぼくらのよあけ(2) (アフタヌーンKC)

ぼくらのよあけ(2) (アフタヌーンKC)

『ぼくらのよあけ』と団地の関係については色々と知りたいことがあったので、これは行かねばと思い駆け付けた。今井さんは後半から登場だったのだが、そもそも前半が団地妻で盛り上がりすぎて40分ほど押し、9時くらいから壇上に上がった。

しかしゲストを呼びつつもここまでゲストにはしゃべらせずひたすら周りがゲストおよびその作品への愛を朗々と語るイベントと言うのは、そうそうないのではないか。というくらいに団地団の「ぼくらのよあけ」に対する愛が伝わってきた。それほどまでに今井さんが阿佐ヶ谷住宅含めて団地についてきちんと取材をしてあの漫画を描いたということなのだろう。

以下、『ぼくらのよあけ』の話題を中心に、団地団と今井さんのやり取りで面白かったものをまとめてみた。


団地団一同:何故阿佐ヶ谷住宅なのか
今井:最初は団地を舞台にするつもりではなかった。宇宙船のパーツが各地に散らばっており、それを集めて回る話だった。
もともと「明るい未来を描いた作品が最近ない」というところから始まっているので、レトロフューチャーを描こうという話だった。なんで団地になったのかは……覚えてない。

速水:阿佐ヶ谷住宅はなぜ2038年に残っているのか
今井:『ぼくらのよあけ』はかなりドラえもんを意識していた。ドラえもんは今と変わらない日常の風景の中で、ドラえもん自身や未来の道具が自然に受けいれられている。ぼくらのよあけも、リアルな2038年を描きつつ、いくつか明らかに説明のつかないものを描いている。オートボットはそれ。そして阿佐ヶ谷住宅も、同じように説明のつかないもののひとつ。なんで2038年に残っているのか、僕にも分からない。

大山:団地に描写が素晴らしい!
今井:あれ、実は3DCG。連載なのでどうやって団地を書き続けるかが課題だった。ロケハンにCGチームの人も一緒に行って、写真からCGを起こしてもらった。ちなみに人工衛星も3DCGだけど、これはなぜかイニシャルDの監督が描いてくれた。

大山:団地団本で章ごとの扉絵を描いてもらったが、なぜ第三章の扉絵は都営矢川北アパートなのか?良い団地だけどマイナー過ぎるでしょ!
今井:別の団地に行こうとしていて、たまたま電車を降り過ごしてしまい、降りた駅が都営矢川北アパートの最寄り駅だった。反対側の電車に乗ろうとしたら、駅から団地が見えたので、寄ってみたらすごくおもしろい団地だった。都営矢川北アパートは阿佐ヶ谷住宅についで舞台の候補地だった。


他にも今井さんが「団地もキャラクターの1つ」と名言感あふれるセリフを残したりと、『ぼくらのよあけ』ファンにはたまらないイベントだったと思う。

あと大山さんが「阿佐ヶ谷住宅含めて、多くの団地は地理的に不利な場所に立っており、その地理的制約に必要な機能を詰め込んだので一見すると不可思議な形態になることがある」といった趣旨の話をしており、面白いと思った。大山さんはおそらくこうした機能が形態を決定するというか、ほぼ機能がそのまま露わになったような形態が好きなんだろう。「公団の団地は好きだけど同潤会アパートは好きじゃない」みたいな心境はそういう話を聞くとああなるほどと思う。センス闘争の行きつく果て、みたいな気もするけれど、その道を極めていて非常に面白かった。

またこのイベントの数日前に阿佐ヶ谷住宅に行ってみたのだが、不思議な空間だった。住宅街の中にごく自然に溶け込んでおり、どこが境目なのか分かりづらいかたちになっている。建て替え計画が進んでおり半分廃墟のように見えるのがその不思議さの一因ではあるのだけど、一番の原因はあの緑の多さだろう。当時緑が何もなかったので住民が頑張って緑化運動をしたらしいのだが、それらがきちんと管理されかつ年月がたって鳥や風で運ばれてきた植物も一緒に生い茂り、かなり周りとは違う環境が出来上がっている。あの過剰なまでの緑とテラスハウスの雰囲気が混じって、独特の空間を作っているように思う。