絶倫ファクトリー

生産性が高い

Webはコンテンツとプラットフォームがすごく近い。紙は遠い。という話。

こんな話である。

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Webはコンテンツとプラットフォームがすごく近い。紙は遠い。

紙の本や雑誌を作る過程(企画・執筆・編集・印刷・製本……)とそれらを売る過程(流通・書店での販売)がきっちり分かれている。当たり前だと思うかもしれないが、これらをウェブに当てはめてみると、そうでもない。本をコンテンツ、売り場をプラットフォームと呼び替えると、Webメディアはコンテンツとプラットフォームがかなり接近していることがわかる。コンテンツを作った人たち(もちろん社内で職種はわかれているけど)が、そのまま自サイトのトップページその他でコンテンツを見せる。Webメディアはコンテンツでもあり、プラットフォームの要素も兼ね備えている。もちろん、Google を始めとする検索エンジンや、TwitterFacebookといったソーシャルメディアからのアクセスも大量にあるため、すべてのアクセスを自らのプラットフォームで生み出しているわけではない。とはいえ、コンテンツ(本)とプラットフォーム(書店)が分かれているリアルの世界に比べれば、Webメディアはコンテンツとプラットフォームがとても接近している。以前、インフォバーンの小林弘人氏が『新世紀メディアロン』で夢想したのは、コンテンツとSEO=検索エンジンというプラットフォームへの最適化の融合だった。

年末に、Webと紙の違いをテーマにした久谷女子のトークイベントが開かれた。そこで @kanose さんが、作品をコンテンツと呼ばれることについて、こんな違和感を述べていた。


僕はまさにWebメディアでコンテンツとプラットフォームの間を結ぶような仕事をしている。ので、気持ちは分からなくはない(雑誌編集者出身の人も社内に多い)のだけど、上記のようにWebはコンテンツとプラットフォームが近いので、どうしても見せ方=プラットフォーム上でいかにアクセスを生むか、から逆算してモノを見たり作ったりしがちだ。これはもう、仕組み上そうなっているので仕方ない。これはコンテンツへの軽視ではなく、使っている語彙(紙―書店/コンテンツ―プラットフォーム)が紙の世界とWebの世界では違うのだ、程度で理解して貰えると嬉しいなあと思っている。

コンテンツとプラットフォームの融合

ところで冒頭に挙げた三角形では、コンテンツ―プラットフォームの横軸の他に、商業―同人の縦軸も入れている。商業と同人の差はコンテンツの内容や質もあるが、商業用の流通経路に乗るかが特に決定的な差になる。とらのあななど同人コンテンツを専門的に扱う業者もあるが、基本的に商業誌と同人誌は流通ルートが異なるし、後者の方が小規模だ。となると同人誌は自前でプラットフォームを持つか、コミケなどの即売会に頼ることになる。

紙の同人誌は、それでも物理的な制約があって、自前のプラットフォームはなかなか持てない。専門店に委託するか、即売会に参加するかぐらいだろう。これが電子書籍で同人誌を作ると話が変わってくる。発送や在庫管理といった紙媒体特有の流通コストがないので、自前でぷらっとホームを持つのが(紙よりは)容易だ。

ちなみに電子書籍で同人誌を作る際は、プラットフォームは出来れば自前で持った方がいいと思っている。あまり有用なプラットフォームがまだ無いし、その上捌けた数に関わらず一律に手数料をハネられるものが大半なので、作り手側の旨味がとても少ない。

自前でプラットフォームを持った同人誌はコンテンツとプラットフォームが限りなく近づいたメディアである。もはやメディアなのかなんなのか分からないが、とにかく先の図で言えば下の頂点にさなり近いところにいる。問題はわざわざコンテンツとプラットフォームで分業していたのをくっつけて、本当にその同人誌は数が出るのかというところなのだけど、長くなったのでそれはまた後で。