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絶倫ファクトリー

生産性が高い

グラビティで始まりグラビティで終わる物語 ―「ゼロ・グラビティ」を観てきた

※ネタバレあり。



1.物語が良い
2.宇宙空間の描写が良い
3.3Dを上手く使っている

ということでとても良い映画だった。

グラビティで始まりグラビティで終わる物語

既に見た人の多くが口を揃えて言うように、邦題の「ゼロ」は余計だ。この物語はグラビティに始まり、グラビティに終わる映画だからだ。

サンドラ・ブロックの演じる主人公は、娘を事故で亡くしている。原因は道端で「転んで」頭を打ったことだった。グラビティ(重力)のせいで娘を失った。

彼女はそのショックから逃げるように、宇宙でのミッションに没頭していた。映画の大半は、そんな彼女が事故で船外を彷徨い、無重力空間のトラブルや恐怖と闘いながら、なんとか地球に帰還する様子を描くのに割かれている。ゼロ・グラビティの世界だ。

ラストシーン、脱出用の宇宙船が海に着水する。普通ならばそこで終幕なのだが、コクピット内に海水が入り、彼女も一度海に潜らざるをえなくなる。宇宙服が離着陸時用のものでなかったのか、どんどん体は沈んでいく。グラビティのある世界に、一気に引き戻される。

泳いで近くの岸についた彼女は、自分の足で地面に立つ。カメラはローアングルで、重力を噛みしめる彼女を写す。

グラビティのある世界から逃避し、グラビティの無い世界で死の淵に追い詰められ、それでも最後に意志を持ってグラビティのある世界に戻る。彼女の物語は、グラビティで始まり、グラビティで終わる。だから、邦題の「ゼロ・グラビティ」は物語の半分しか示していない。

「ゼロ」を付けたくなるのも分かる無重力空間の描写

とはいえ、うっかり「ゼロ」を付けてしまいたくなるくらい、宇宙空間の描写は巧みだった。宇宙空間を描いた作品では「アポロ13号」が好きだったのだけれど、それを上回る出来だった。

空気抵抗がない宇宙空間では、体が回転すると決して止まらない。序盤でサンドラ・ブロックの体がグルグル周る長回しのシーンがあるのだが、見てる方はいつか止まるだろうと思っている。ところが本当にこれが止まらない。速度も落ちない。当たり前なのだが、「あーそうかこれほっといたら一生回り続けるのか!」と途中で気づき、怖くなる。

回転だけではなく移動もそう。一度ある方向に動いたら、別の方向に力をかけないと止まらない。吹き飛ばされて回転しながら漆黒の闇に吸い込まれていくサンドラ・ブロックの姿は、それだけでぞっとする。

なのでこの映画、ホラーではないが、ストレス耐性がなかったりパニック映画弱い人は向かないかもしれない。過呼吸を起こしたりしかねない。そのくらい巧い描写だった。

3Dは必須

「3Dで見ろ」も事前によく聞いた話だった。無重力の中でふわふわと球体になって浮かぶ水分や、猛スピードで飛んでくる衛星のカケラは確かに3Dでないと楽しめない。3D対応の映画はいくつか見たが、思わず「おっと」と避けそうになった映画は、初めてだった。どこかで読んだインタビューでは、3Dをうまく活かすにはどうすれば、というところから逆算して作ったとも聞いた。2Dで見るメリットは無い。

逆に言うと、本作の3D表現の面白さは、脚本レベルで根本的に「埋め込まれた」ものだ。ここまで3Dを活かせる映画は、しばらく出てこないかもしれない。