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絶倫ファクトリー

生産性が高い

「Web解析ツール」は死に、「Predictive First」へと移行する

新卒でWeb系企業に入ってから6年間、webサイト改善の仕事に携わってきたけれど、いわゆるこの業界で言われる一般的な「Web解析」のやり方というのは、もう時代遅れなのではないかとこの半年くらい考えている。正確に言えば、Adobe Analytics(以下AA)やGoogle Analytics(以下GA)といった「Web解析ツール」を使ってWebサイトの課題を見つけて改善点を洗い出し云々……と言ったやり方は古いものになりつつあるのではないか、という話だ。

点の改善 線の改善

AAやGAといった従来のWeb解析ツールの弱点は、サイト全体でユーザがどのように動いているのか、つまりサイト上でのカスタマージャーニーを把握できないことだ。直帰率の高い入口ページを見つけて改善する、CVしているユーザがよく見ているページを見る……これらは基本的に課題がある、またはCVに寄与していそうな「点」を見つけて、改善していく発想である。僕は勝手にこれを「点の改善」と呼んでいる。

一方で「線の改善」がある。ユーザーの行動をごっそり集め、パターン化し、確度が高いけれどCVしていない人、つまり「惜しい人」に狙いを定めてサイトを改善していくというやり方だ。これは一般的なWeb解析ツールでは出来ない。ログデータを直接見て、分析する必要がある。

どちらの改善手法も実践したが、当然ながら改善施策の精度が高くなるのは線の改善だ。点の改善は調べられるポイントが無数にある分、「どこが課題か/金脈か」といった洗い出しの部分がヒューリスティックな作業になりやすい。要は良いツルハシを持っていても、どこを掘ったらいいのかは職人芸の世界、すなわち「勘」頼みということだ。一方で線の改善では、僕らが持つのはツルハシではない。どこを掘ったらいいのか教えてくれる、確かな嗅覚を持った犬だ。言ってしまえば「ここほれワンワン」の世界である。

もちろん、線の改善にもいくつか難点はある。一つは必要なスキルや環境が高度になりがちだということ。ログを扱うためデータ量が膨大になり、分析しようにも前処理の段階でもはやPCで行える作業ではなくなる。自社サーバーやトレジャーデータといったサービスにログをぶち込んで、取り出せるスキルや環境が必要になる。また分析時にも統計学や機会学習の実践的な知識が不可欠だ。これもやっかいで、単に分散や回帰分析ちょっと知ってます、程度では全然歯がたたない。ビジネスで成果を上げるにはある程度高度なレベルまで知識が必要になる。いわゆるデータサイエンティストという人たちの手を借りねばならない。

「線の改善」の自動化=予測先行型

そして最大の難点は、分析⇔施策の間にある再帰性だ。この「ログデータをぐりぐり分析する」部分は、サイトの構造を変えるたびにやらなければいけない。分析に基づいてサイトを改善したは良いが、サイトを変えたので当然「惜しい人」の行動パターンは変わり、分析はやり直しになる。下手をすればトップページのリンクをひとつ変えただけで、ログを引っこ抜き重い処理をかけて分析した結果がパーになることもある。

しかし施策を打つごとにこんな重い処理をかけていたのでは、データサイエンティストが何人いても足りない。となると、この「ログデータを集めて解析し、「惜しい人」を見つけ出す」作業は、自動化したいと思うのが自然だろう。まさにドンピシャ、というツールは寡聞にして知らないのだが、最近のAIに対する注目度の高さは、それを後押ししてくれる。AIによる自動分析を謳った「wacal」などはこうした発想に近い気がする。

人工知能があなたのWebサイトを分析 - AIアナリスト

TCでもこうしたツールを「予測型プラットフォーム」と呼び、Web解析にかぎらず多変量解析に基づいた予測先行型の思想を「Predictive First」と呼んでいる。もちろん発想自体は新しいものではないのだが、技術発展によって圧倒的にコストが下がり、実際に企業が導入しやすくなっている点が革新なのだろう。

自動化マーケティングの将来…データから顧客や市場の現実を知ることがベース | TechCrunch Japan
Predictive First: How A New Era Of Apps Will Change The Game | TechCrunch

「Web解析ツール」という言葉が、AAやGAといった「点の改善」のためのツールを指す時代は終わり、ログからカスタマージャーニーを把握し、自動で鉱脈を見つけてくれる「Predictive First」なツールを指す時代が、もうまもなく来るのではないか。そんな風に思っている、というか事業会社のいちマーケティング担当者としてはそういう時代が来ることを切に願っている。