絶倫ファクトリー

生産性が高い

音楽の中にコミュニケーションがあるAWA、コミュニケーションの中に音楽があるLINE MUSIC

ストリーミング型音楽サービス時代において価値があるのは、楽曲そのものではなく楽曲の組み合わせに関する情報=プレイリストだし、そういう意味でAWAの方が優れているのでは、という話。

ストリーミング型音楽サービスが急に盛り上がり始めたらしい。とりあえずAWA とLINE MUSICを両方試してみた。現時点での視聴可能曲数や参加レーベルに大きな差はなさそうだ。料金も「ストリーミングサブスクリプションは月額1000円くらい」のラインを守りつつ、幾つかの制限をかけてそれより安いエントリープランを設けている点は変わらない。

違うのはそのエントリープランの中身だ。AWAのエントリープランはプレイリストをベースにした聴き方しか出来ない。特定の曲を指定して視聴する「オンデマンド型」は、上位のプランでのみ可能となる。一方LINE MUSICのエントリープランは月次の総視聴時間に制限をかける。オンデマンド型の聴き方はプランを問わず可能だ。それどころか未課金ユーザーでも1曲30秒は試聴できる。

AWAもLINE MUSICも音楽をフックにしたコミュニケーションを指向している点は変わらない。前者はプレイリスト単位でのコミュニケーションを想定しているのに対し、後者は曲単位のコミュニケーションを想定している。「音楽の中にコミュニケーションがある」のがAWA、「コミュニケーションの中に音楽がある」のがLINE MUSICといったところだろうか。

参考jp.techcrunch.com

もうひとつは、会員登録がなくても、各曲30秒の試聴用の音楽だけは聴ける、ということです。トークルームとかタイムラインに好きな曲を送り合えます。LINEのスタンプはコミュニケーションの中に溶け込みますよね? それと同じように、音楽を送り合えるような設計にしています。

個人的にはAWAの思想の方がストリーミング型サービスに合っている気がする。CDやダウンロードを前提にした場合、プレイリストがあっても曲を持っていなければ再生できない。聞き放題なストリーミングなら、リストにあるものは聞ける(はずだ)。気分やシチュエーションに合わせたプレイリストのラインナップをどれだけ持てるか、が聞き手の関心になるし、リストの作り手にも注目が集まるだろう。

またLINE MUSICの「コミュニケーションの中に音楽がある」やり方、つまりプレイリストではなくオンデマンド型のサービスは、どうしても「特定の曲がサービス内に無いこと」へのストレスが強くなる。運営方針として楽曲数をとにかくフルカバレッジに近づけないといけない。そこまで出来たらそれはそれで勝てるのだろうが、サービス開始当初は厳しい。また本当にマスなコミュニケーションを狙うならジャニーズを引っ張ってくることは必須条件といっても過言ではない気がする。これはこれでだいぶ至難の技で、そんな寝技力がLINEにあるのか……といった疑問というか心配が首をもたげてくる。

どうもLINEは彼らの成功パターンである「ガラケービジネスをスマホで再現する」ことに固執しているのではないか。上記のTC記事を見るとややガラケーの亡霊に足元を掴まれている気がしなくもない。LINEは確かにガラケーのメールを簒奪することに成功し、次いでデコメをスタンプに置き換えることに成功した。ガラケーを通じたコミュニケーションを全てLINE上で再現しようという戦略なのだと思うが、今回はそのやり方に拘泥し過ぎた気がする。

あと余談ついでにいえば、AWAやLINE MUSICの料金プランを見ていて、やっぱりニコ動プレミアム会員は安いんじゃないかと思ったりもした。あっちはもうカドカワという「CGMの上澄みをメジャーステージに上げる」仕組みを持っているのでそこはダンピングしても構わないという話なのかもしれないが。というかおっさんたちがAWAだLINE MUSICだと騒いでる間に、若者文化はほぼニコ動に取られかけているのではないか。そんな気がしてならない。