Web業界の人はそろそろPDCAという言葉を捨てたほうがいいんじゃないか
PDCAは「小さな改善」を指すものではないし、そもそもWebサイト改善には向いてない。まずPDCAはP=計画ありきの「マネジメント」の話だし、Webはコントロールできない要素が多すぎて精度の高い計画立案が難しいからだ。
PDCAサイクルの出自は製造業の品質管理である。そしてPDCAという概念のキモは、「品質管理の話をしていると思ったらいつの間にかマネジメントの話をしていた。何を言っているのかry」である。例えば「C」は品質チェック作業はなく、品質のばらつき具合が事前の計画どおりだったかどうかを判断する。それはP=計画の検証そのものだ。製品の品質を管理するときに、単に品質チェックの「作業」を頑張ればいいのではない。品質の問題が生産工程全体のマネジメントの問題にスライドしていく。それがPDCAという概念の画期的な点だった。
だからPDCAというのは製造業だろうがWebだろうが、常にマネジメントの問題として扱われるべきだ。製造業の場合、P=はまさに生産「計画」であって、「売れる製品の企画」ではない。同様にWebサイトにおいても、Pは「ユーザに刺さるページの企画」ではない。例えば「ペルソナに合わせたサイト全体の導線設計」とかである。
ところが、Webサイトのユーザーというのは本当にコントロール出来ない。製造工場ならスイッチで機械の動きはコントロールできるし、従業員もまあそれはそれで別のマネジメント手法によってコントロールするノウハウがなくはない。Webサイトのユーザは動きが複雑すぎるし、こちらからコントロール出来る部分もとても少ない。なので最初の「ペルソナに合わせたサイトの導線」という「計画」は、とても精度が低い(あるいは精度が高いのか低いのかすら分からない)ものになる。
ではどうすればいいのか。Webサイト改善のキモはなんだかんだ言って数と速さである。以前、同僚が「Design Sprint」のワークショップに参加していた。僕は残念ながら参加できなかったのだが、「今まで参加したワークショップの中で一番つかれた」と言っていたのが非常に印象的だった。下記のSlideShareにもあるが、Design Sprintは企画して実装して計測して次の案を考えて……というPDCAスタイルを否定する。代わりに決められた時間内で「アイディア⇔プロトタイピング」を往復させる。非常に雑に言えば、「一定の精度を保ちつつ、施策の数と速さを最大化させる」思想だと言える。
正直本当にこの通りにやろうとするとチーム全員エンジニアリングやデザインの実務能力がないと厳しいし、そもそもスタートアップ向けの理論なので既存のレガシーなWebサイトを改善する手法ではないかもしれない(そして大半はそういうケースだろう)。とはいえ、数と速度を追い求める一つの手法ではあるだろう。