紙の同人誌が許されるのは電子書籍元年までだよねー←今年はセーフ!
「電子書籍元年」の呼び声が寿命間近のセミ程度に落ち着いたころになって、ようやく国内大手2社の端末が発表された。SONY ReaderとSHARPのGALAPAGOS。お仕事用ブログの方でひとつエントリにしようと思いいろいろ調べていたのだけど、しかし今年は「電子書籍元年」ではなく「電子書籍バブル元年」とのちに呼ばれるのではないかと今から危惧している。鬼が大爆笑しそうな話だが、しかし先行して展開しているiPhone/iPad/Andoroid端末を加えても、どうもぱっとしない。
具体的にいえば要はお前らKindleに勝つ気あるのいやないだろ、という話。SONY Readerはネットワーク機能ついてないし(通信モジュールがないのでソフトウェアアップデートではどうにもならない)、GALAPAGOSはさすが液晶のSHARPだけあって端末が高い高い。おまけに以前から電子書籍に取り組んできた独立系のプラットフォーマー、たとえばボイジャーなどは蚊帳の外。.book形式に対応してるのは国内大手だと結局SHARPがドコモから出すSH-07Cくらいなのだろうか。しかしiPhone/iPadを抱えるソフトバンクはもとより、他のプラットフォーマーも3G回線キャリアを少なからず巻き込んでいるあたり、既存のガラケー電子書籍市場はきっちり取りこぼさないつもりのようだ。
にしても出版社-コンテンツマーケット-端末の囲い込みが強すぎて、Kindleが本気を出したときに勝てる気がしない。パブリッシャー側は本来マーケットや端末なんかどうだってよく、本が売れりゃいいので囲い込まれる筋合いはないのだが、今はまだ言説先行で実際の市場が立ち上がる前なので、大きな賭けに出たくないパブリッシャー側と他社を早々につぶしたいプラットフォーマーの思惑が一致してああいうのが出てきてしまったのだろう。ePubがない、だからクローズドだなんか言わないので(ePubだろうがPDFだろうがDRMでコントロールは自在にできる)、せめてパブリッシャーの変な囲い込みはやめてほしかった。これを機に英語勉強しなおして本当にKindle買おうかな。
というわけで、文学フリマの宣伝です。
文学フリマに出ます
筑波批評2010冬(充電中)
目次
緊急座談会 これからの「フィクション」の話をしよう(高橋志行、佐藤翔、伊藤海彦、シノハラユウキ)
科学と文学のあいだを行き来すること――書評『進化思考の世界』『認知物語論キーワード』『華竜の宮』 シノハラユウキ
100%勇気――書評『万物理論』 山本勉
白くまを救うとき――多和田葉子『雪の練習生』 栗森勇太
跳躍するヒロイズム――ゲームデザインにおける個人の表現 高橋志行
ウェブは死なない――オープンなウェブと生成力 伊藤海彦
コピー本 72頁
100円
僕はまた最後尾で――一説によるとklov枠というのがあるらしい――あれそれなんてハブ?――クリス・アンダーソンの「Web is Dead」を元手に、オープンなウェブとは何か、今後のウェブはどうなるのかを論じます。上に書いたような、専用端末機の普及がウェブに与える影響についても触れています。
また以前2号にわたって『筑波批評』の表紙を描いてくださった id:YOW さんの個展が今月22日〜27日にわたって銀座で開かれていたので、それを見に行ってきました。帰りがけにテアトルで観た「劇場版マルドゥック・スクランブル」の感想と合わせて緊急座談会を開いたので、ぜひそちらもご覧ください。
YOWさんの個展はこちらから。
個展告知:タイトルは『マッカーサーの子供たち』その内容について。-東京で来週22日から27日まで開催 - 蠅の女王
「マッカーサーの子供たち」というタイトルながら、「再現絵にはしたくない」というYOWさんのコンセプトのもと終戦直後の日本が描かれています。アカデミックの領域からネタを引っ張ってくるのが得意な方で、ジョン・ダワー『敗北を抱きしめて』 小熊英二『民主と愛国』などに興味のある方は非常に楽しめたのではないかと思います(もう個展は終わっちゃいましたが)。座談会では「絵画にしかないフィクション」という軸に沿いながら、ミズーリ号の絵と権力の二重性、そのフィクション性などについて語っています。