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「偶然」は「必然」に勝てるのか? Facebook vs Google

クーリエ・ジャポンの3月号に「Faceobook vs Google 「ウェブの未来」を賭けた戦いが始まった」という論考が載っていた。元はアメリカのフォーチュン紙の記事。

COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2012年 03月号 [雑誌]

COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2012年 03月号 [雑誌]

Googleは昨年7月、ソーシャルの土俵でGoogle+という武器を引っ提げてFacebookに宣戦布告した。そのことを主にビジネス周りのトピックを中心に書いている。GoogleはWebの中心に鎮座してきたが、FacebookのようなGoogleクローラーが届かない領域が拡大するとビジネスに支障が出る。人々が情報を得る過程でFacebookおよびそれと連携したWebサービスを使うようになれば、Googleを「中抜き」する可能性が出てくる。そしてFacebookの規模は今や看過できない規模にまで膨れ上がってしまった。かくてGoogleは元Appleのポール・アダムスを使ってGoogle+を設計し、ソーシャルの世界に三度参入した……というお話。

この記事は、最近発表されたGoogle+と検索の密接な結合をきちんと予測している。また今後GoogleAndroid端末にGoogle+をより直接的な形で統合することも予測している。これはフォーチュン誌以外でも耳にする予測で、僕も十分ありうると思っている。というかそのくらいしか勝ち目はないのでは、と思っている。

記事ではGoogleがかなりの勢いで追い上げているぜ!という論調になっているが、そもそもFacebookが本当にGoogleを脅かす存在なのだろうか。長期的なスパンはさておき、今現在の話をすると、そうでもないのではないか。

Googleのビジネス上の強さは、検索という行動とお金の結びつきやすさにある。検索は「これが欲しい」「これが気になっている」という意志を顕在化させる。すでにある意志や意欲を上手く「刈り取り」、広告主の元へ誘導することで、広告主にとっても有益なユーザー=顧客を引き合わせている。Googleの収益源は、ほとんどがこの検索連動型広告だ。

一方のFacebookもメインは広告事業だ。だがFacebookの広告は基本的に属性ターゲティング型の広告であり、広告主は狙いたいユーザーの属性を細かく指定して打つタイプのものだ。だがこれは検索のように顕在化した意志を刈り取るタイプのものではなく、「刺さる」可能性は必ずしも高くない。ここはまだFacebookの課題であり、逆に伸びしろのある部分だろう。

確かにFacebookは伸びているが、その収益スキームはGoogle検索連動型広告ほど高効率ではない。そしてソーシャルグラフをベースにした広告はなかなか難しい。昨年行われた開発者向けイベント「f8」でザッカーバーグはしきりに「セレンディピティ」を強調したが、彼のいうソーシャルグラフを通じた偶然の発見は、Google検索連動型広告にある「必然を装う」という行為から最も遠い。検索連動型広告は、それが広告であるにも関わらず、ある種の必然をユーザーに対して装うことができる。しかし偶然の発見は、広告主の意図によってもたらされるものではない。広告としては、効率が悪すぎる。

そんなわけで、収益を支える要の部分はまだFacebookは弱く、Googleに軍配が上がる。


では過去も含めて、もっと長期的なスパンでGoogleFacebookを比較した時には?

という話を「ねとぽよ」という同人誌で書いています。サンプルがこちらから見れるので是非。


ねとぽよ | ねっとぽよくはへいわしゅぎをひょーぼーします

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