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「まちづくりの新潮流」

まちづくりの新潮流―コンパクトシティ/ニューアーバニズム/アーバンビレッジ

まちづくりの新潮流―コンパクトシティ/ニューアーバニズム/アーバンビレッジ


副題に「コンパクトシティ/ニューアーバニズム/アーバンビレッジ」と書いてあるとおり、従来型のモダニズム的都市計画を脱した、新しいまちづくりのプロトタイプを、主に海外の事例をメインに紹介している本である。


主に前半はモダニズム的都市計画の失敗例の紹介になる。アメリカ・ミズリー州のプルイット・アイゴー団地や、イギリス・マンチェスターのヒューム地区などが挙げられている。つまるところ、(思想としての)”コルビジェ”の否定、といえるだろう。「近隣住区」理論によって提示された、歩行者・自動車の分離、地上の密度を下げてスカイクレイパーによる高層・高密度化、クルドサック(袋小路)などが、主に犯罪環境学的見地から否定されている。

そして後半はタイトルにあるように、コンパクトシティと言った新しいまちづくりのスタイルを紹介している。コンパクトシティとは、無秩序にスプロールする郊外都市のアンチとして、住居や商業地域を高密度に集結させ、移動コストの低下を目指した都市である。ライド・アンド・パーク(自動車で移動できる場所が制限され、それ以降は駐車して徒歩で移動)の発想と、LRTという路面電車を使った移動方法で、環境的な負荷を下げる狙いもある。人を効率よく収容し、かつ効率よく移動させるこの概念は、時間・金銭・環境的負荷を軽減する。

ニューアーバニズムアーバンビレッジなどは、こうしたコンパクトシティの要素も取り入れつつ、その町の「らしさ」のようなものを追求している。デザインコードを厳密に制定し、統一的なデザインを持つ街にしたり、共同の農地を作って住民で収穫をしたりと、その町の「アイデンティティ」を確立しようという試みである。そうしたほうが、町への帰属意識が高まり、コミュニティ形成に良い影響を与えるという。


こうした発想は、どれも面白いと思えるものだった。が、少し気になったのが、コンパクトシティなりニューアーバニズムなりの具体的成功事例として挙げられているものは、その紹介文の最後に大概「この地域の物件は資産価値が何倍に増えた」とかいう締めで終わっている点である。確かに街としての魅力が上がれば、地価は上がるだろうし投資対象にもなるだろうが、それでもって「コミュニティは回復し、犯罪率は激減しました!わーい!」とか言われても、そりゃ単に地価が上がって住める人間がアッパークラスの人間に限定されたからじゃないの?と思ってしまったりもする。まちづくり系の人からすればそれはそれで大成功なのだろうが、僕としては「それなんてゲーテッド・コミュニティ?」と言いたくもなる。現にゲーテッド・コミュニティについて述べた本に出てきた街が、この本にも出てきたしね。


都市社会学的見地からすれば、もちっと「コミュニティ」に着目した視点が載ってる文献も読むべきなんだろう。というわけで図書館で探したら、なんと目星をつけた3冊が3冊とも貸し出し中だった。泣きたくなる。