絶倫ファクトリー

生産性が高い

活字をつめ込みすぎた

一気に三冊。

幸福論―“共生”の不可能と不可避について (NHKブックス)

幸福論―“共生”の不可能と不可避について (NHKブックス)

宮台 真司, 鈴木 弘輝, 堀内 進之介らによる鼎談。
「幸福論」とタイトルには書いてあるが、「幸福とは何か」というより、「いかにして幸福は可能か」という、社会工学的な見地に立った本である。
僕はNHKブックスの対談本として、「自由を考える」と「東京から考える」を読んだのだが、いずれも対談ながら、ある程度両者の話はかみ合っていた、ように見える。しかしこの本においてはその限りではない。何と三人の話のかみ合わないことよ。おそらく見た目の問題としては鼎談後、編集段階における宮台の大幅な加筆修正も一因だろうが(と、本書に書いてある)、三社のスタンスの大きな違いに根源がある気がする。
宮台はヒラリー・クリントンの「フィールグッド・プログラム」を例に出し、少数のエリートが大多数の大衆に対し、おのおの必要な情報を小出しにしつつ、彼らを慰撫することでコントロールしようと述べる。「人を見て法を説け」タイプである。必要な人間に必要な情報をエリートが与えてやる。
一方堀内はそうしたやり方に疑問を呈し、「人を見て法を聞け」というスタンスを取る。説く方と聞く方に分かれてしまった時点でもはや意見の一致はなさそうに見えるし、実際ほとんどないのだが、そこに鈴木はちょこちょこと二人の文脈とは違うことを述べて終わるのみ。こりゃ鼎談にならないわ。

とは言え、いかにして社会を設計するか、というテーマにつき、話は教育からオタクまで幅広く及ぶ。そのつど各人の専門的な知識に基づいた意見が繰り広げられるので、読んでいて飽きない。大事なところにマーカーなんか引いてたら全部真っ赤になってしまう。その分読むのに体力を消費する気もするが。

社会契約論 (岩波文庫)

社会契約論 (岩波文庫)

「GW中に、買ったまま読んでない本−通称「積読」−を無くそうキャンペーン」第…何弾かは忘れた。GW中に古本屋をあさって本を買い込んでしまったため、絶対に成し遂げることは出来ないキャンペーンだがまたそれはそれで良い。

薄い本だが無駄に時間がかかった。それぞれ出てくる用語が何を指しているのかを把握するのにかなり苦労するし、なにぶん昔の訳なので読みづらいことこの上ない。もう一度読まないと内容を把握したことにはならない気もする。
しかしひとつ気づいたのは「社会契約論」という名前にうっかりだまされて、その内容を誤解していた。*1多分高校時代の世界史の不勉強が元だろう。原著読むことは大事ですね、というお話。

カーニヴァル化する社会 (講談社現代新書)

カーニヴァル化する社会 (講談社現代新書)

上記二冊の口当たりの重さに萎えていたところ、ブックオフで売り叩かれていたのでうっかり買ってしまった。大雑把な中身は書店で立ち読みしていたので知っていたのだが、ちゃんと読んでみると改めて面白い。ただその中にある若者論、ケータイ論についてはやや大雑把するぎる点がある、というか筆者が導き出したい結論に都合のいいところばっかり抜き出されてる感もある(まぁ学者なんてそんなもんだろうけど)。特に若者論については、その後多くの反論がなされている点もあるので、今現在の彼の最新の意見も聞いてみたい。

*1:ホッブズと差のない記憶の仕方をしていた